会長・実行委員長挨拶

建築学会会長 中島 正愛日本建築学会(以下本会)は、会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達を図ることを目的とし、1886年(明治19年)に創立されました。来年4月には創立130周年を迎える本会は、わが国の工学系学会のなかでも最も歴史の古い学会の一つで、創立以来現在に至るまで、わが国建築界において常に先導的な役割を果たしてきました。
 
毎年開催される大会は、約1万名もの会員が一堂に会して日頃の研究成果を発表し、さまざまな討議を通じて互いが研鑽しあう、本会が主催する最も重要な行事の一つです。また大会に併せて、開催地域の皆様には、美しくそして災害にも負けない建築・都市づくりや、建築に関わるさまざまな文化の発信等、本会の社会貢献活動へのご理解を深めていただくために、講演会やシンポジウムを開催しています。
 
地球規模で見れば人口が増え経済活動の活性化に伴い多くの開発が進む一方で、わが国においては、成長型社会から成熟型社会へと大きな転換期を迎えるという状況下、私達は、人類の持続的発展をこれからどう維持するかという究極の問題に向き合わなければなりません。人類の持続的発展には新しい生き方を思考しなければなりませんが、その過程において、人と建築に関わる社会の要請に的確に応えることを使命とする本会が果たすべき役割には多大なものがあります。
 
本年度の大会のメインテーマは「いま、地域と生きる建築」です。大きな転換期を迎えるわが国の新しい生き方と、その基盤を支える建築が取り組むべき事項について、建築が本来もつ「豊かな学際性」を発揮してともに思考し行動する機会を、この大会が提供できることを祈念して止みません。多くの会員の皆様のご来場をお待ち申し上げる次第です。

2015年度日本建築学会大会(関東)開催にあたって

大会実行委員長 藤井 衛 建築学会大会は、今回、全国大会としては116回目を数えます。関東大会としては、1890年に第1回目を開催し、今回で57回目を迎えることになります。東海大学湘南キャンパスでは37年前に開催しており、今回で2回目となります。メインテーマは、「いま、地域と生きる建築」であり、グローバル社会の中で地域に価値を見出し、人々の暮らしや社会をつくる、地域と生きる建築のあり方を、今、見つめ直してみたいと思っています。
 現在、「地域と建築」をキーワードに多くの記念行事が計画されています。記念特別講演としては、内藤廣氏(建築家、東京大学名誉教授)をお招きし、地域と建築のありかた、果たすべき役割について語っていただきます。また、記念シンポジウムでは基調講演者として関幸子氏(ローカルファースト研究所所長)をお呼びし、パネラーの方々とこれからのまちと建築のあり方について意見を交わします。見学会も厚木、鎌倉、葉山、横浜の現代建築や歴史建造物など神奈川県内の多彩な建築を訪ねます。
 東海大学湘南キャンパスの主な建物は、大正、昭和を通じて日本の分離派建築運動の指導的建築家であった山田守(1894-1966)によって設計されました。山田守は、東海大学建築学科の初代主任教授でもあり、キャンパス内において「建築家山田守展」や「山田守建築ガイドツアー」等の企画も盛り込んでおります。ぜひ、これらのすばらしい建築を見学していただきたいと思います。
 さらに、本大会では、会員外の一般の方々が東海大学湘南キャンパスに来ていただけるよう、本大会のメインテーマをより具現化した様々な企画づくりも行っています。
 本大会は積極的に地域に働きかけ、地域からの参加を促し、地域に開かれた学会大会を目指しています。ぜひ、学術交流だけではなく、一般の地域の方々との交流も楽しまれることを願っています。